「仕上げ(マングル・乾燥)」という仕事とは
精練・染色を終えた生地は、ミシンでつなぎ合わされ長く棒に巻かれた状態にされ、「仕上げ」と呼ばれる工程に入っていきます。生地一枚一枚をお湯に通し、絞り、精練時にとりきれなかった不純物などを除去する最終すすぎともいえる作業が「マングル」と呼ばれる工程です。繊細でデリケートな天然繊維であるがゆえの、実にきめ細かく手間のかかる仕事です。
そして工程は「乾燥」へと移っていきます。いわば「蒸らしてアイロン掛けしてしわを伸ばす」工程です。
棒に巻かれたまだしわが残る生地を乾燥機にセットし、生地の状態を見ながら、しわを伸ばすアイロンに当たるシリンダーの温度や生地に掛けるテンションを微妙に調整します。この調整次第で生地は驚くほどに綺麗に仕上がるのです。この技法は代々伝わってきたもので、往時の職人たちの知恵が今も生きています。使い込まれた年代物のシリンダーの熱源は蒸気です。シリンダーに蒸気を通し、表面温度を約150~160℃に保ちながら作業します。ローラーが幾重にも回転し、その中を布が滑るように流れていく光景は、まるで生地の織りなす白い滝のようです。時には熱したシリンダーに接触し火傷を負いながらも、布のしわを減らし、美しい生地に仕上げて次の工程へ渡す、という想いは忘れません。すべてはお客様のために。「つなぎ」の工程であるからこそ、おろそかにできないことがあります。そんな職人魂が今もここに確かに受け継がれています。