「生地仕立て」という仕事とは
精練の準備工程として行われるのが「生地仕立て」という作業です。作業場は工場というより旅館の大広間のような空間で、ほとんどが畳敷きとなっています。絹の生地は繊細で傷つきやすく裂けやすいため、移動の多いこの工程では板間やコンクリートより畳の方が生地に優しいという永年の知恵が生かされています。
機屋さんから搬入された生地はそのまま精練できるわけではありません。まず解反機という機械にかけて、回転させながら生地を振り落としていきます。それらのうち重く厚いものは「枠掛け」という生地をロールケーキ状に巻いて吊るものへ、軽く薄いものは「札掛け」という二枚重ねに仕上げる工程に分けられます。
枠掛けは、台に乗りながらクルクルと均等間隔で回しながら素早く紐を通していく、経験と根気とバランス感覚の必要な仕事です。生地を筒状に巻くことにより、精練時に均等にお湯に浸けることができ、ムラが出ないようになるのです。札掛けも軽目の生地を二枚重ねに仕上げる繊細さと正確さが必要な、これまた根気のいる作業です。この工程を経て、生地は精練へと送られていきます。