「染色」という仕事とは
精練された布は、どうやって鮮やかな色に染まっていくのでしょうか。染色工程は予想以上に繊細で神経をすり減らすような作業の連続です。染料の色はベースとなる染料に差し色と呼ばれる染料を加えて作られます。濃度や配合を細かく調整して、実際の素材を使い小さいハガキ大程度の「見本染め」を行います。その確認が済んでから、本染めへと移ります。素材となる布は絹をはじめ綿など多種に渡ります。
染める方法としては、生地をロープ状に巻き回転させて染料液に浸けていく「ウインス染め」と、精練のように生地を液に吊るして浸ける「吊るし染め」があります。
前者は回転しているので生地がこすれやすく、機械にからまる心配もあり常に目を離せない。後者は、生地が重く力仕事になる上に染料が浸みやすくなるよう生地に一定の間隔を開けるなど細かな準備も必要となります。どちらも技術と経験が必要とされる仕事です。
染色の工程で最も気を配るのは、いかに「染めムラ」を無くすかという点です。染色とは熱い染料液で生地を「煮込む」状態で、回数や時間がかかるほど生地にも負担がかかり傷んでしまいます。いわば、「生地が命を削っている」工程なのです。だからこそ、染料の配合から温度の調整、時間管理に至るまで細心の注意を払います。「ムダなしムラなし」の熟練の職人技は、そんな生地に対するいたわりの想いから生まれています。